人に薦めたいマイナー気味な小説レビューブログ

ちょっとマイナーだけどオススメ出来る小説をレビューしています

Aコースを読んでから!山田悠介「Fコース」レビュー【ネタバレなし】

f:id:hitosusu:20221114214025j:image

 

Fコース(著:山田悠介)
幻冬舎文庫
ジャンル:ミステリー、サスペンス
ページ数:本編163ページ
読破所要時間:約1時間17分※1ページを28秒で読んだ場合

 

■要素:女子高生、仮想世界、ミステリー

 

■あらすじ

高校二年生の智里(ちさと)は、成績優秀だが無口で偏屈、一匹狼。そんな彼女は「バーチャワールド」のAコースをプレイしてから仮想世界の虜になってしまい、同じ高校の瑠華、菜穂子、瑠華の妹のかや乃の4人で再びバーチャをプレイしに行く。入った店では新たに導入された「Fコース」を店員に勧められ、4人は仮想世界の中で美術館に隠されたある絵画を探していく。

 

■雑感(個人的見解を大いに含みます)

Aコースと一緒に図書館に置いてあったので借りてきた本書。

凄く月並みですが、まさかのラストでした。

まず初めに、この作品は何としても「Aコース」を先に読んでから読むべきです。なぜならラストの衝撃は本作の仮想空間ゲーム「バーチャワールド」の設定が存在すること、及び「Aコースのラストの読後感を味わっていること」が大前提だからです。

そうしなければこの作品のラストの衝撃を最大限に味わうことが出来ません。

そして正直言って読後感は良くないです。胸糞の部類に入るかも…。

 

「Aコース」は読後感も後腐れなくスッキリした作品だったのですが、本作はスッキリどころかズーンと落ち込んでしまうかも知れません。

 

それでも私は読んで良かったと思います。

真実を知った時の主人公の智里の頭が真っ白になっていく感にシンクロし、妙なエクスタシーを感じたり、現実の非情さだったり、フィクションだからといって全てが気持ちよく上手くいくでもない展開の斬新さに引き込まれました。良い意味で予想のつかない展開に振り回された感じ。

あとなんというか、やっぱり道具は使い方次第なんだなと改めて思わされました。(詳しく書くとネタバレになりかねないのがもどかしい)

 

あとAコースと異なる点として、登場人物たちのキャラクターの掘り下げがより深くなっていましたね。これにより彼女たちのゲーム中の葛藤であったり湧き上がる激情であったりがより鮮明に感じられました。

その掘り下げがラストに活きているかと思えばそうでもないのがちょっと残念ですが…;

 

いやしかし、リアル鬼ごっこの作者様と知らず短くてサックリ読めそうという理由で借りてきた「Aコース」と「Fコース」、併せて読んで大変満足。

山田先生の著書の中ではデビューされて間もない時期に書かれたようなので、もっと新しい他の作品も読んでみたいですね~。